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 佐世保生まれのわたしにとって、お正月の雑煮といえば、丸餅に紅白のかまぼこ、サッと茹でたかつお菜にゆずをのっけて、焼きアゴのだしが定番。それに母のお手製の赤かぶと白かぶの酢漬け、人参と大根のおなます、サバの昆布巻き、かずのこ、なまこ、煮豆、筑前煮が大鉢で並び、食べる時分になると、家族一人ひとり、きれいなお皿に取り分けられる。
  これが幼い頃からの変わらぬ正月風景だったが、結婚をしてからというもの、わが家のそれはとても味気ないものになってしまった。
  人並みに雑煮くらいは作れても、あとに続くおせち料理をこしらえたことがない。母娘の暗黙の了解で、大晦日の晩に重箱に詰めたものを持たせてくれ、三十半ばになる今もその好意に甘えている。「いつかはちゃんと教わるつもり…」が永年の言い訳だが、親もいつまでも若くはない。
  今回のお正月エッセイをきっかけに、母の作る雑煮についてあれこれたずねてみた。
  「お餅の丸かとは、角が取れて物事が丸く収まりますようにっていう意味のあって、紅白のかまぼこは縁起もの、かつお菜のみどりは春の息吹。天日干しされた焼きアゴはは魚臭さのなかけん、上品なだしの取れるったい。アゴだしは佐世保の人にとっちゃ馴染み深かもんたい」
  と秘伝の呪文のようにサラサラと答えてくれた。たかが雑煮と思うなかれの郷土食の文化に感心しきり。
  娘から妻、そして母親になって思うことは、家庭の味、郷土の味を伝えていくことの大切さである。その家それぞれの「秘伝」を耳から耳へ、四季折々の料理のおいしさを子どもらの舌に残していってあげなければと思う。
  まずはできることから……。同じ台所に立って、母の味を受け継いでいこう。
  季節は秋から冬へ、そして、また新しい年がおとずれる。
 
文 荒岡 弥生

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