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主婦のわたしが最初に「春」を見つけるのは、市民の台所である戸尾市場。八百屋、魚屋、青果店、花屋、和菓子屋など店先に並ぶ旬の食材や芽吹いた自然の色合いに、長かった冬の終わりを見る。
ちょうどこの時季、新米の出荷と同じくらい待ちどおしいのが「新茶」の出番。佐世保は「世知原茶」が有名だ。
新茶の中でも一番味がのって美味しいのが、立春(2月3日)から数えて88日目に摘みとられたお茶。これが「八十八夜茶」といわれるもので、昔から不老長寿の縁起ものとして珍重されてきた。また、この日に摘みとられたお茶を飲むと、一年間、無病息災で過ごせるという言い伝えもあるようだ。
さて、世知原町には何軒かのお茶屋さんがあるが、日本茶の魅力や味わい方を教えてくれる、日本茶インストラクターの資格を持つ若いご夫婦がいらっしゃる。
おふたりの名前は、『小林製茶』の小林隆行さんと美香さん。育児真っ最中のなか、夫婦代わりばんこで猛勉強し、晴れて合格。「ペットボトル茶の普及で、家庭でお茶をいれる習慣が薄れてきていることや、日本茶本来の味がわからなくなっている若者の増加に危機感を感じています」
というおふたりの話を聞き、手軽さが生んでしまった落とし穴に、深いため息が出た。
お店を訪ねた2月下旬のこの日、出産予定を4日後に控えた美香さんは、妊婦さんとは思えないスピーディかつリズミカルな手つきで、極上の一杯をいれて下さった。きれいなうぐいす色をしたそれは、まろやかな味わいを残しながらのどの奥へと静かに消え、ふぅ?と心地よい脱力感を与えてくれた。
「料理は愛情とよく言われますが、お茶は思いやりでしょうか。風邪をひいている人にはカフェインの少ない抹茶やほうじ茶、疲れて帰ってきたお父さんには、まず少しぬるめのお茶をお疲れさまと言って出してあげる。たかがお茶でも、日本人はこの一杯のお茶にホッと癒されるんじゃないでしょうか」
もうすぐ新茶の季節。
朝、心おだやかに家族の一杯をいれると、
自然と自分の心まで潤っていくのはなぜなんだろ?
お茶から始まる朝も悪くはないな。
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| 文 荒岡 弥生 |
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