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普段は忘れていても、ふとした光景や匂い、味、音に出会ったとき、それまで眠っていた記憶が蘇ることがないだろうか。
わたしにとってそれは夕焼け空だ。
「卒業したらもどる」という口約束をして、上京したのは18の春。毎日、家と学校を往復するだけだった田舎娘にとって、都会の生活は目まぐるしくも、その忙しさが人を洗練してくれる気がしていた。
親の気持ちを推し量ることもなく、卒業後はあっさりと東京で就職。どこかで覚悟はしていたと思うが、母の表情は季節はずれのアキアカネのように、虚ろで淋しげだった。
社会人になって初めて帰省した時、佐世保はマッチ箱のように小さく、退屈な街に思えた。東京に戻る日を指折り数えて待つわたしに、高校時代の友人は「東京ってそがんよかね?」と素っ気ない。 呆れ顔のまま彼女はわたしを車に乗せ、当時新設されたばかりの西海パールシーリゾートに連れて行ってくれた。
「ヘェ〜、こがん場所のできたとねぇ」 広々とした芝生の公園を抜けていくと、洒落た海辺のデッキが広がっていて、その開放的な海と空の景色に心が癒されていく気がした。
ここちよい海風をBGMに、女同士時間を忘れて語らったあの日。やさしい茜色の大空に包まれ感傷的になったわたしは思わず、「仕事辞めて帰ってくるけん」と約束してしまった。
これを若気の至りというのだろうか…。いや、夕焼けマジックだ。
こうしてわたしは都会に別れを告げ、女同士の約束を果たすべく、夕焼けのきれいなこのまちに戻ってきた。余談だが、これは母と友人が仕組んだ夕暮れ作戦だったらしい。
市内のサンセットスポットとしてオススメなのが、コスモス畑の展海峰から見る南九十九島の夕陽や、360℃の展望が楽しめる石岳展望台、九十九島を一番間近に見られる船越展望所。島々に映える落陽のワンシーンが楽しめる。
人恋しくなる秋の夕暮れ。だれかと一緒に明日の空を見上げてみてはどうだろう。 |
文 荒岡 弥生 |
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