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1999年春号

具足玉(そないだま)の国

 我が国で初めて書かれた地理誌が風土記です。和銅六年(西暦七一三年)朝廷は全国六○余カ国に『郡・郷の名称は好い漢字で表記せよ。郡内に産出する銀・銅・植物・鳥獣や、山・川などの名称の由来を報告せよ』と命じており、諸国で風土記が書かれました。
  その後、多くの風土記が散逸してしまいましたが、幸いなことに、『肥前国風土記』が残っており、当時の様子を垣間見ることが出来ます。
  佐世保市は、松浦郡と彼杵郡の境界に位置し、『境木』の地名はそれに由来しております。
  『彼杵郡』の名前の起源について風土記は、
「昔、ヤマト朝廷がこの地方を平定したおり、土着の民が、三つの美しい玉を天皇に献上した。その呼び名は、『白珠』と『石上の神の木蓮子玉』であった。これをご覧になった天皇は『この国は、具足玉の国(玉がそなわっている国)と名付けよ』と仰せられた。今、彼杵郡というのはそれを訛って言うのである」と記しております。
  その『白珠』は白く輝く真珠であり、『石上の神の木蓮子玉』は黒真珠であったと考えられます。この地方で『イタブ』又は『イタビ』と呼ばれる木は桑科の『犬枇杷』であり、秋には黒光りする小粒の実がなります。珍しい黒真珠をこのイタブの実に見立てたものでしょう。
  江戸時代の書物に『この入海の浦々に真珠をとるもの多し。玉は極品なり。他国にもこの貝あれど、ここなるにしかず』と書かれており、昔から真珠は当地のものが一級品であったことがわかります。
  九十九島の所々に黒いブイの真珠棚が浮かんでおり、静かな海で今も真珠が育っております。真珠の生産は愛媛県に次いで長崎県が全国第二位の生産高となっております。

記  澤 正明

 


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