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平戸松浦の三十四代藩主松浦清(清山と号す)は名君として名高く、随筆「甲子夜話」は近世の社会・文化を知ることが出来る一大資料とされ貴重なものです。その中に「平戸領名物集」という一文があり、江戸時代中頃の享保時代(一七二〇年頃)の平戸藩内各地の名物を知ることが出来ます。
佐世保関係の名物として、
「針尾駒、早岐白荒生、焼酎。権成寺蓮、同浦白和布。三河内陶器。日宇真綿。佐世保葛粉。相神浦上米。知見寺の鶉、賎津浦伊勢海老。同浦恵美須嶋釣針松。白魚川白魚、鮎。」と記しています。
針尾には馬を生産する牧場があったと考えられ名物は駒。早岐の白荒生は何かは不明、それに焼酎。
権成寺は蓮、権成寺浦は白和布、早岐瀬戸のワカメは風土記にも書かれて有名です。三河内は陶器、今日も陶磁器の産地です。日宇では養蚕が行われていたとみえ名物は真綿、佐世保は葛粉、相神浦は上米、今も相浦谷は穀倉地帯です。知見寺では鶉の飼育が行われ、賎津浦では伊勢海老が採れていたようです。賎津浦の恵美須嶋には釣針のように曲がった松がありそれが有名であり、白魚川では白魚や鮎がとれていたとの事。賎津浦は相浦港のあたり、白魚川は相浦川のことです。
当時の佐世保村と日宇村との境界は山祇町から戸尾町に流れる馬氏川であり、それより北西の地域で堺木の辺りまでと赤崎方面が佐世保村です。現在の市街地の大部分は海であり、山裾にわずかに耕地があったようです。
佐世保の名物は「葛粉」、傾斜地の痩せた畑でも育つ葛を栽培していたのでしょう。疲弊した農家の様子が想像できます。
葛はマメ科の蔓性植物で、秋の七草の一つであり、根に多量の澱粉を蓄えます。その根を砕いて水に洗い出し精製する葛粉は良質の澱粉です。葛湯は滋養料として昔から重用されてきました。また冷たい葛饅頭は夏の味覚です。
記 澤 正明
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