「あぶない刑事」シリーズ脚本家・柏原監督と巡る佐世保ロケ地ツアーレポート
「あぶない刑事」の脚本家・柏原寛司監督が佐世保をおとずれファンとロケ地巡りのツアーを開催しました。しかし、これは単なる聖地巡礼ツアーではあらず!一流のプロの「視点」に同行し、佐世保の街が持つ「物語のポテンシャル」を探る。そんなスリリングな体験の全貌をレポートします。
Column
柏原寛司監督(脚本家)プロフィール
社団法人シナリオ作家協会会長
1949年生まれ、東京都出身。1974年「傷だらけの天使」で脚本家としてデビュー。
◇映画
『STRAIGHT TO HEAVEN~天国へまっしぐら~』『名探偵コナン 紺碧の館』『ゴジラVSスペースゴジラ』『あぶない刑事シリーズ』『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』他
◇TV
「名探偵コナン」「警視ーK」「豆腐屋直次郎の裏の顔」「プロハンター」「刑事貴族」「ルパン三世」「あぶない刑事」「ベイシティ刑事」「キャッツ・アイ」「ザ・ハングマンⅡ」「西部警察」「探偵物語」「大都会」「大追跡」「俺たちの朝」「太陽にほえろ!」他
いきなり“あぶない”「ここだけの話」
秋晴れの午後、JR佐世保駅前に集まったのは、伝説の刑事ドラマ「あぶない刑事」の熱心なファンたち。彼らのお目当ては、シリーズの多くを手掛けた脚本家・柏原寛司監督ご本人です。
今回のツアーは、佐世保観光コンベンション協会のスタッフがガイドを務め、柏原監督が特別に「同行」してくださるという、なんとも贅沢な企画。バスは最初の目的地、「佐世保市民文化ホール(佐世保凱旋記念館)」へと向かいます。
ホールで始まったのは、熱気あふれる座談会。柏原監督が出がけた作品について参加者が直接聞ける特別な1時間です。
「(あぶない刑事の)最後の船のシーンで、主演の二人は本当に死んでしまったのか」という質問に、柏原監督からは当時の撮影秘話を交えながら、視聴者の想像に委ねる演出だったと語りました。
「予告編とは全く違うセリフがある理由は?」という質問には、作品の面白さを追求するための演出上の工夫だったと説明。さらに、「今後のシリーズの可能性」を問う質問には、40周年に向けての期待と、新たな展開への可能性を示唆し、会場は大きな盛り上がりを見せました。
もちろん、話題は長崎ロケのことも。参加者からは、長崎とゆかりのある質問や、ロケ地に関する思い出話が多く語られ、長崎が作品にとって特別な場所であったことがうかがえました。。
監督の揺るぎない制作哲学である「スターシステム」(役者がいかに魅力的に見えるかを最優先する)という信念から、今だからこそ話せる業界の裏話まで、貴重なエピソードが惜しげもなく披露されます。
その多くが、残念ながらここで詳細をお伝えすることが許されない「オフレコ」の話 ばかり。「あぶない刑事」という作品が、いかに多くのプロフェッショナルの情熱と「あそび心」、そして絶妙なバランス感覚の上で成立していたか。その片鱗に触れ、参加者の興奮は高まるばかりです。
あの「劇用車」と記念撮影
会場には柏原監督持参の「あぶない刑事」の台本も展示。ファンは貴重な当時の台本を手に取り、パラパラと読む姿が見られました。
座談会の興奮冷めやらぬ中、さらなるワクワクを楽しんでいただくよう、劇中で活躍した車両を準備させていただきました。
憧れの車を前に、参加者と監督との記念撮影タイム。思い思いのポーズで写真に収まる監督とファンの皆さん。ドラマの世界から飛び出してきたかのような光景に、和やかでありながらも熱い時間が流れます。佐世保にいながらにして、一瞬で「あぶデカ」の世界にトリップしました!
横浜とは違う新鮮さが、ここにある
再びバスに乗り込み、市街地中心部へ。向かったのは、四ヶ町アーケード内にある「京町交番」です。
ここは、TVシリーズの中で唯一「あぶない刑事」のロケが行われた、佐世保の「聖地」。
佐世保観光コンベンション協会スタッフの解説を聞きながら、ファンは当時のシーンに思いを馳せます。
「監督、当時こちらには?」という問いに、「来てないんですよ」と笑う監督。しかし、約37年(1987年放送)の時を経て初めてこの場所に立った監督は、プロの目で周囲を見渡し「横浜とは違う新鮮さがあるね」と一言。
「(あぶない刑事の舞台である)横浜は見慣れた風景で、ある種の”予定調和”があるけど、佐世保はまた違う雰囲気があって、新鮮だね。」と町の風景を撮影しながらお話されていました。監督のその言葉は、このツアーが単なる「過去の聖地巡礼」ではなく、新たな発見に満ちた旅になったようでした。
京町交番から四ケ町アーケードへ続く道すがら、脇道を紹介。ここはドラマ「逃げる女」のロケにも使われた場所です。
その道を見た瞬間、監督の目が「観光客」から「物語を探すプロ」の目に変わりました。
「いいじゃない、この雰囲気」
「監督、もしこういう場所で撮るならどんなシーンを?」と問われると、監督の答えは具体的かつスリリング。
「刑事が(犯人を)追っかけて、逃げていくシーンかな。でも、もうちょっとゴミゴミした場所、例えば商店街の裏とか、ダンボールとか置いてあるような場所が(撮影には)いいんだよ」と話します。
歩きながら柏原監督は琴線に触れた景色をビデオに納めていました。特に監督が好きなのは、商店街の屋根の上にあるキャットウォーク。屋根の上を走るアクションシーンで使うことがあるそうです。
ここでドンパチやりたいね
そして、いよいよこのツアーのハイライトとなる場所へ。四ケ町アーケードを抜けて向かったのは、佐世保随一のディープスポット、戸尾市場商店街ととんねる横丁です。
ここはロケ地ではなく、監督にぜひ見ていただき、シナハン(シナリオハンティング)をしていただきたいと思い訪れた現場です。
戦時中の防空壕跡がそのまま店舗になっている歴史を聞き、監督の興味はさらに深まった様子。商店街を歩きながら脇道を見つけるとどんどん入っていきビデオ撮影。「ここいいね」「おもしろいね」と興味深々。そして、一言。
「(ここで撮るなら)交通封鎖してドンパチやりたいね」
いつもの市場が、一瞬にして映画のアクションシーンの舞台に見えてきます。
この場所がドラマ「17才の帝国」など、すでに多くの映像作品のロケ地として協力的であることも、監督の創作意欲を刺激したようです。佐世保の日常に眠る「物語の種」を、参加者全員で目撃した瞬間でした。
40年越し、偶然の再会の地へ
市街地を離れ、バスは最後の目的地「針尾送信所」へ。
ここは「あぶない刑事」ではなく、約40年前、監督がテレビドラマ「誇りの報酬」のロケで訪れた、ゆかりの地です。
バス車内で「監督はこの場所をどうやって見つけたんですか?」という質問が出ると、たまたまロケハンで見つけてここで撮影することを決めたとのこと!
監督からは「石原プロに見せなくてよかったよね(笑)。爆破しましょうとか言われちゃうから」と、“あぶない”ジョークも飛び出します。
40年ぶりに来た監督は「当時はこんなに整備されていなかったな」と思い出しながら屹立する無線塔を仰ぎ見ていました。
針尾送信所のボランティアガイドさんの話を伺ったあと、無線塔と電信室をまわりました。
近年ではNHKドラマ「17才の帝国」のメインビジュアルとして使われ、訪れる人が「CGだと思った」と語るほどの圧倒的なスケール感。この唯一無二のロケーションが、40年の時を超えて今もなお、クリエイターたちを惹きつけていることを実感しました。
「なかったこと」にできない体験
興奮に満ちたツアーも、いよいよ終わりへ。
帰りのバス車内では、佐世保のソウルドリンク「クールソフト」が配られ、クールダウン。映画『坂道のアポロン』のキャストも楽しんだというこの味に、監督も「美味しいね」と一言。ロケの合間に食べた「佐世保バーガーも美味しかった」と語るなど、佐世保の「食」の話題にも花が咲きました。
そして、ツアーの最後には、参加者全員に柏原監督の作品のDVDやポスターがプレゼントされるという、とびきりのサプライズが。監督ご本人から手渡される貴重な記念品に、参加者の喜びも最高潮に達しました。
振り返れば、これは聖地巡礼ではありませんでした。
一流のプロフェッショナルの「視点」を借りることで、佐世保の街がいかに「物語の宝庫」であるかを再発見する、知的な冒険でした。
ツアーの最後、監督は「今日あったことは、なかったことに」と、石原プロの忘年会でお馴染みのジョークで締めくくられました。
確かに、ここでしか聞けない貴重なお話の数々は、参加者だけの秘密として胸の内にそっとしまいます。
でも、監督の視点で新たな輝きを放ち始めた佐世保の魅力と、この“あぶない”体験の「わくわく感」だけは、決して「なかったこと」にはできません!
佐世保観光コンベンション協会では、今回のツアーのような特別な企画など、佐世保の魅力を深く体験できるツアーをご用意しています。
あなたも、新しい物語が生まれる瞬間に立ち会いに、佐世保を訪れてみませんか?
「あぶない刑事」シリーズ脚本家・柏原監督と巡る佐世保ロケ地ツアーマップ
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